朝鮮語広場 > 釈読口訣概説(形態編)

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釈読口訣の概説です.이승재(1998)をまとめ,例文などを補充したものです.例文の略号はそれぞれ以下の通り. 例えば「(구인02:01-03)」の場合,≪旧訳仁王経≫の2張1行目から3行目ということになります.各資料の詳細については口訣資料についてを参照してください.

格語尾

[主格] -/이, -/이

*‘-’... 華嚴經疏(12世紀初)の例が最初.
*高麗後期の송독?口訣では‘-’が用いられるようになる.

[對格] -/(을)

*‘-’... 華嚴經疏が最初.動名詞語尾‘-’に直接統合した例.

[處格] -/아, -/여

*11世紀以降の資料にしか現われない.
*釋讀口訣資料では,‘時’と統合する場合にのみ‘-’ が用いられる.

[屬格] -/ㅅ, -/(의)

*吏讀の‘-叱’(無情物と尊稱),‘-矣’(非尊稱)とに對應する.

[具格] -/로

[共同格] -/과, -/여

*母音あるいはㄹの後での‘-와’への交替はなかった.

[呼格] -/하, -/여, -/아

*‘-’(尊待), ‘-’(平待), ‘-’(下待)の使い分け.
*‘-’... 感嘆の機能も同時に持っていた.

副語尾

[提題] -/(은)

*體言と動名詞語尾につく.
*吏讀の‘-段/’系統に對應する語尾はない.

[復同(添加)] -/도

*‘-/마도?’の使用もあり... 硏究の必要.
*吏讀の‘-置/도’に該當する語尾はない.

[强調(限定)] -/사

*15世紀の‘-’に該當する.
*名詞․助詞․動詞語幹に直接統合する.
*あるいは副詞․副詞語にも直に統合... 吏讀よりも分布に幅が見られる.

[(各自)] -/마다

*體言類と體言語尾に統合.

[(選擇)] -/나

*吏讀の用法とほぼ同じ.

用言語尾(1) 先語末語尾

[敬語法(1) 尊敬法] --/시, --/시, --/겨

*화엄, 화소では‘--’により尊敬法の‘-시-’を表していた.
*‘賜’の音價が시>と變化するにつれ,금광, 구인, 유가などでは‘--’により‘-시-’を表記するようになった.
*‘--/’により尊敬法を表記した例も見られる.
*‘--’... 尊敬法先語末語尾の一種.
*口訣の尊敬法... ‘-/-’(尊待), ‘--’(平待), ‘-Ø-’(下待)の3等級體系.
*이승재(1996:531)によれば,尊敬法における主語と先語末語尾との対応は以下の通り.
主語先語末語尾叙述語(‘有’の場合)
極尊待(尊待)仏類,地位の高い菩薩など‘-/-’有(격시>겨시)-
尊待(平待)大衆,仏子,無情名詞など‘--’有(잇겨)-, 有(잇겨)-
下待(下待)衆生,無情名詞など‘-Ø-’有(잇)-, 有(잇)-
*吏讀の尊敬法體系とほぼ一致する.
*13世紀末以降の順讀口訣資料では‘--’が見られない.

[敬語法(2) 謙讓法] --/

*화소では話法動詞にのみ統合する.

[時相法(1) 現在] --/

*吏讀の‘-臥-/’に對應.
*‘--’... 尊敬法の‘-/-’‘--’よりも後ろ,意圖法の‘-//[오/우]-’の前に統合.
*‘--’のすぐ後ろに動名詞語尾‘-/ㄴ’がついた例も多い.
*15世紀の‘--’につながるか?

[時相法(2) 過去] --/다(더)

*12世紀の資料である화소, 화엄では現われない.
*13世紀半ばと見られる구인になって初めて現われる.
*高麗後期の順讀口訣資料には‘--’‘--/더’が多く見られる.

[敍法(1) 確認法] --/거, --/고, --/아, --/나

*‘--’... 動名詞語尾‘-/ㄴ’, ‘-/ ’の前に,尊敬法の‘-()-’‘--’の前に,終結語尾‘-/다’の前に統合される.
*15世紀の場合,先語末語尾‘-거-’と‘-리-’が統合すると‘-리어-’として實現するが,釋讀口訣では‘--’となる.
*‘--’... ‘--’と似た分布.
*以下の例で‘--’‘--’とは形態論的構成が同じ.
*‘--’‘--’... 同一な形態素の異表記といえる.
*‘--’... 以下の例で‘-()-/고(골)’の前に來ているため,‘--’‘--’と同一の形態素と見なしうる.
*‘--’の後ろには動名詞語尾や尊敬法の‘-()-’などが統合可能.
*ただし動名詞語尾が統合する際には,間に‘-/-/오’が入り込む.
*‘--’... ‘--’‘--’と分布が同一.

[敍法(2) 意圖法] --/오, --/오, --/오

*‘-//-’の前に來る先語末語尾... 謙讓法,確認法,尊敬法,時相法,强調法など.
*‘-//-’の後ろに來る先語末語尾は‘--/’のみ.大部分は動名詞語尾が統合する場合が多い.あるいは連結語尾‘-/며’と終結語尾‘-/다’程度.
*動名詞語尾の前に來る‘-//-’は,1人稱主語に呼應する形態素ではない.
*ただし連結語尾‘-’,終結語尾‘-’と統合した場合,その動詞に呼應する述語は1人稱.

[敍法(3) 强調法(感歎法)] --/곳, --/앗, --/옷, --/ㅅ

*全て‘-ㅅ-’を持っているという點が共通する.
cf. 15世紀の感動法(志部昭平1990:182)... Ⅳ*ㅅ다(不定), Ⅰ놋다(現在), Ⅰ닷다(回想), Ⅰ*괏다(强勢)
*さらに‘--/골’を追加しうる.
*これらの周りに‘必當, 宜, 皆, 悉’などの副詞が呼應する... 蓋然,强調.
*‘--’‘--’は分布が同じ.
*‘--’は例が多くないが,意圖法の‘--’の前に來る.

[敍法(4) 可能法] --/

*常に語末語尾のすぐ前に來る.
*‘可’や‘能’に呼應する例が多い
. cf. ‘應, 當’に呼應する例もあるが,むしろ少ない方.

[先語末語尾の配列順序]

*例:‘[호리앗다]’‘+오+ㅭ+ㅣ+앗+다’と分析できる.
→‘語幹+意圖法+語末語尾(ここでは動名詞語尾)’の構成と‘繫辭+强調法+語末語尾’の構成が複合したもの.
*‘語幹-過去-謙讓-確認-尊敬-强調-現在-意圖-可能-語末語尾’の順.
*確認法の‘--’‘--’... 常に尊敬法の先語末語尾よりも前.
‘[낙시다]’‘--’も確認法の先語末語尾といえる.‘[]’, ‘[나리며]’‘--’も同樣.
*逆に,尊敬法の先語末語尾よりも後ろに來る‘-/-’は確認法の先語末語尾ではないといえる.
‘善[이시곤뎌]’, ‘[걱시곤여]’などの‘--’や,‘[시골며]’, ‘[시고다]’などの‘--’は强調法の先語末語尾ということに.
*確認法の‘--’‘--’... すぐ後ろに時相法(現在)の先語末語尾が統合することがない.
‘[고오다]’などの‘--’も强調法の先語末語尾といえる.
*けっきょく,確認法か强調法か明らかでない‘--’のすぐ後ろに統合する‘--’は,時相法(現在)の先語末語尾‘--’を表記したものであるといえる(‘[고며]’, ‘[고다]’など).

用言語尾(2) 語末語尾

[終結語尾(1) 平敍形] -/다

*‘如’から?
*繫辭‘이-’の後ろで‘-/라’(<羅)に交替することがある.
*‘--/리’の後ろでも‘-’‘-’に交替.
‘--’が動名詞語尾‘-ㅭ’と繫辭‘이-’の統合したものであることを意味する.
*ただし‘[이다]’, ‘[호리다]’のごとく,‘-다’>‘-라’の交替を見せない例も多い.
→交替が隨意的であったというべき.
*意圖法の先語末語尾‘-//-/오’や時相法の先語末語尾‘--/더’の後ろで‘-다’が‘-라’に交替することはない.
→後代の順讀口訣になってはじめて起こるものと見られる.

[終結語尾(2) 疑問形] -/고

*疑問詞が先行して,說明疑問に用いられる.
*‘’... 15世紀の‘호리오’のごとく,ㄱの弱化/脫落現象が見られない.
*‘-’... 繫辭+强調法の先語末語尾+疑問形の終結語尾.
*‘’... 動名詞語尾のすぐ後ろに‘-’が統合.
*舊譯仁王經の‘[고오리오]’(구인03:23)... ‘-고’が‘-오’に交替.
*舊譯仁王經の‘[고오리아]’(구인14:18)... 判定疑問の‘-/아’が用いられる.
→釋讀口訣で判定疑問の‘-가’が用いられたことはないが,以下の例から設定可能.
*上の例に見える‘--’の後ろでの‘-가’>‘-아’交替は,以下の例でも確認できる.

[終結語尾(3) 感歎形] -/여, -/여

*起源的には繫辭に感嘆形語尾‘-어’が加わった構成.
‘-/’が名詞や動名詞語尾に統合されるのが一般的であるため.
*以下のように,終結の機能をになう例も.
*‘-/’が結合したものとして,‘-/뎌’, ‘-/뎌’がある.
→形式名詞‘’‘-/’が統合したもの.

[終結語尾(4) 命令形] -/셔

*<화소>, <화엄>に‘-[곡시셔]’, ‘-[나쎠]’が見える.
→それぞれ15世紀の‘-쇼셔’, ‘-아쎠’に對應.
*‘-’の前に來る‘--’, ‘-()-’, ‘--’は全て先語末語尾といえる.
→15世紀の‘-쇼셔’, ‘-아쎠’の‘-쇼-’と‘-아-’も先語末語尾に由來するか?
*15世紀の‘라’체に該當する命令形語尾は見受けられない.
*その代わり,‘當 知 二十種 有’(유가04:06-10)の‘知[알오다]’に注目.
→この‘-/다’を後代の資料では‘라’체の命令形語尾に翻譯するのが一般的... 命令形の終結語尾と見ること可能か?
*命令形の終結語尾の前に,確認法の先語末語尾が統合する... 釋讀口訣に見られる大きな特徵.

[連結語尾(1) 對等的連結語尾]

*‘-/며’, ‘-/고’など.
*‘-’... 吏讀の‘-彌, -彌, -旀’に對應.
*‘-’... ‘古’字に由來.吏讀では‘-遣’であり,口訣と對應しない.

[連結語尾(2) 從屬的連結語尾]

*‘-아/어’... 口訣では‘-/아’(<‘良’)で表記するが,吏讀,鄕歌とも一致する.
*‘-/ㄱ/기’が統合した‘-’もある.
*尊敬法の先語末語尾‘-/-’の後ろでは,‘-’が統合せずに‘-/하’が統合する.
*繫辭‘이-’に連結語尾‘-’が統合する場合,‘-[이라]’として實現.
*原因․理由をあらわす連結語尾... ‘-//아곰’
*‘-/오’が原因や理由をあらわす場合も.
*方法を意味する連結語尾... ‘-/오’で表記.
*‘-’が統合した動詞が,格助詞を支配している點に注意.
*方法を意味する連結語尾... ‘-/이’も存在.

[動名詞語尾]

*動名詞語尾は,獨自に連結語尾として使われることがある.
cf. 鄕歌の‘見昆(處容歌), 無叱昆(隨喜功德歌)’における‘-昆’... <‘-고+ㄴ’と分析可能.
→口訣における‘-/곤’... この場合,‘-/ㄴ’が連結語尾の機能を果たしている.
*動名詞語尾に助詞類が統合したり,さらに形式名詞‘’が加わった構成で,文法的機能を果たす場合が多い.

参考文献

口訣についての参考文献を参照のこと.