覚え書き > 中期朝鮮語LaTeXファイルの実際

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ここでは,管理者が実際に作成した発表要旨を例にして,中期朝鮮語を含めたPDFファイルの作成について説明していきます. ある意味では言語学のためのCJKパッケージを用いたLaTeX文書の作成,ともいえます.

前提

本文は朝鮮語ですが,中期朝鮮語の例文などを含みます.ここでは日本語を用いません.章番号は「1,1.1,1.1.1,1.1.1.1…」の形式で,「第1章」などの形式を用いません. また,文献の参照の形式は,「河野六郎(1955:428)」とします.脚注番号は本文が「1」,脚注部分が「1)」となります.

使用するパッケージについて

ここで用いるパッケージについて説明します.必須のものは以下のとおり.

以上のパッケージのうち,CJKとHLaTeXについてはすでに説明済みです.hlatexcjkとは,HLaTeXパッケージとCJKパッケージを同時に使うためのパッケージです.

lingmacrosパッケージは,言語学の論文において例文を表示する際,例文番号や的確性の判定を例文に付けることのできるパッケージです(紹介). 例文番号を自動でふってくれるパッケージについてはいろいろありますが,管理者の場合はこのlingmacrosがいいのではないかと思います.

プリアンブル

パッケージの呼び出し

パッケージを順に呼び出します.本来はEmacsを使って現代朝鮮語はEUC-KRで,中期朝鮮語はUTF-8でコーディングされるようにしたいところですが,New Batangなどのフォントを表示できないため,ここではEmEditorを使って全てUTF-8エンコーディングで文書を作成します.

まずはCJKパッケージを呼び出します.

\usepackage{CJK}

そののちにHLaTeXパッケージを呼び出しますが,ここでは章の題目などにハングルを用いません.したがってhangulではなくhfontを呼び出しましょう.

\usepackage{hfont}

その次に呼び出すのは,CJKパッケージとHLaTeXパッケージとを同時に使用するための,hlatexcjkパッケージです. これを呼び出さないと,一部のパッケージがうまく動作しませんでした.

\usepackage{hlatexcjk}

あとはその他のパッケージを呼び出してやりましょう.

\usepackage{indentfirst,natbib,lingmacros}

以上でパッケージの呼び出しは終了です.

詳細設定

次に,引用の表記方式などその他細部の設定を行ないます.用紙の設定は省略するとして,まずは引用文献関連です.

\setlength{\bibhang}{6em}
\bibpunct[:]{(}{)}{,}{a}{ }{,}

ここでは文献引用にnatbibを用いますが,そのための設定です.詳細についてはnatbib.styを見てください. \bibpunctのデフォルト設定は\bibpunct[, ]{(}{)}{;}{a}{,}{,}のようになっていますが,ここでは(1)年度と,それに続くページ数との間に「:」(コロン)を入れる,(2)複数の引用をコンマで区切る,(3)著者と年度の間にスペースを入れる,というように変えてあります.それぞれ(1)→オプション引数,(2)→第三引数,(3)→第五引数に該当します.

ただし,第五引数によってスペースが入るようになると,引用が括弧内にある場合,例えば「(河野六郎 1955:428)」のような場合には有効ですが,通常の本文中で引用する場合,例えば「河野六郎(1955:428)」のような場合にも,著者と年度の間にスペースが入ってしまいます.

次はフォントです.

\DeclareFontFamily{C70}{song}{}
\DeclareFontShape{C70}{song}{m}{n}{<-> CJK * nBatang}{}
\DeclareFontShape{C70}{song}{bx}{n}{<-> CJK * nGulim}{}
%\DeclareFontShape{C70}{song}{bx}{n}{<-> CJK * nBatang}{\CJKbold}

ここでは通常(normal)の書体にNew Batangを,太字(bold)の書体にNew Gulimを使っています.太字にもNew Batangを使いたい,という場合には,3行目をコメントアウトして,4行目のコメントを外してください.

最後に脚注番号です.以下のコードはHLaTeX付属のhfn-k.texをそのまま用いたものです.ご注意ください.

\newdimen\foot@parindent
\newdimen\footnumbersep

\def\fn@markstyle{\@thefnmark)}
\settowidth{\footnumbersep}{~}

\long\def\@makefntext#1{
	\settowidth{\foot@parindent}{\fn@markstyle}
	\@setpar{\@@par\@tempdima \hsize
	\advance\@tempdima-\foot@parindent
	\parshape\@ne\foot@parindent \@tempdima}\par
	\parindent8\p@\noindent
	\hb@xt@\z@{\hss\hss\fn@markstyle\hskip\footnumbersep}#1}
そのほか,好みに応じていろいろ変えてください.管理者の場合,\renewcommand{\refname}{参考論著}\renewcommand{\tablename}{表}などをつけ加えています.

本文

CJK環境の記述

この例題では,文書全体をUTF-8エンコーディングで作成します.そのため,CJK環境は次のように,1度だけUTF-8エンコーディングであることを宣言すべく,記述すればいいわけです.

\begin{CJK}{UTF8}{}
\CJKhangulchar

2行目は,字間の扱いにたいするコマンドで,これを入れないとうまいこと改行されません.くわしくはCJKパッケージ付属のドキュメント(CJK.doc)をご覧ください.

例文の記述

例文番号つきで例文を書くためには,lingmacrosパッケージを用います.例文が1つだけの場合にはenumsentenceを,例文が複数の場合にはeenumsentenceを用います.以下はそれぞれの例.

\enumsentence{例文}
\eenumsentence{
  \item[ㄱ.] 例文その1
  \item[ㄴ.] 例文その2
}

上の場合,出力は次のようになります.番号が1から始まる場合と仮定します.

(1) 例文
(2) ㄱ. 例文その1
    ㄴ. 例文その2

引用と相互参照

natbibパッケージを用いる場合,文献の引用は以下のように行います.

\citet{kouno:1955}
\citep[428]{kouno:1955}

この例ではそれぞれ,「河野六郎(1955)」,「(河野六郎 1955:428)」のような出力を得ることができます. ただし,thebibliography環境に以下のような記述があることが前提です.

\bibitem[河野六郎(1955)]{kouno:1955}
    河野六郎(1955) 「朝鮮語」『世界言語概説 下巻』東京:研究社

natbibパッケージについて,これ以外の使い方は付属ドキュメントを見て下さい.

相互参照の方法については,通常と変わりありません. ただし,例文番号を参照する際に若干の注意が必要です. 以下はlingmacros.styから直接引用したものです.

% \eenumsentence{\item[a.] A third \label{bar}example \toplabel{foo}
%                \item[b.] A fourth \label{baz}example}
% Testing references \ref{foo}, \ref{bar}, and \ref{baz}.
% which produces
%  (3) a. A third example
%      b. A fourth example
% Testing references 3, 3a, and 3b.

すなわち,\eenumsentence環境の内部において,\toplabelはその環境全体の例文番号を,\labelは各\itemにつけられたラベル(ここではa,b)までも含めて参照するわけです.

また,lingmacrosパッケージにおいて便利なコマンドのひとつに,\ex{}があります.このコマンドは,そのコマンドから見た例文番号を相対的に指示するものですが,例えば\ex{1}はそのコマンドの次に現われる,最初の例文番号を示します.また\ex{0}は直前の例文番号を出力します.具体的な例を見てみましょう.

% 以下の番号は,↓の例文番号が1であるとした場合.
\enumsentence{これは1番目の例文です.}

\ex{0} = 1, \ex{1} = 2

\eenumsentence{
\item[a.] これは2番目の例文,aです.
\item[b.] これは2番目の例文,bです.
}

\ex{-1} = 1, \ex{0} = 2, \ex{1} = 3

\eenumsentence{
\item[a.] これは3番目の例文,aです.
\item[b.] これは3番目の例文,bです.
}

\ex{}がとりうる数値の範囲は特に制限がないようですが,3とか4とか指定しても混乱するだけなので,やめておいた方が無難でしょう.

しめくくり

文書の最後で,CJK環境を閉じるのを忘れないようにしてください.その前に,thebibliography環境を記述して,参考文献リストを入れるようにしましょう.\bibitemにおいて,「[志部昭平]」のように[ ](角括弧)をオプション引数として使うためには,以下のように{ }でくくってやる必要があります.

\bibitem[시부{[志部昭平]}(1990)]{sibu:1990}
	시부[志部昭平](1990), ≪諺解三綱行実図研究≫, 東京:\ 汲古書院.

この項目を引用すると,\citet{sibu:1990}では「시부[志部昭平](1990)」のようになります.

結論

ここまでの内容をtexファイルの流れに沿ってまとめてみると,以下のとおり.

\documentclass{article}
\usepackage{CJK}
\usepackage{hfont}
\usepackage{hlatexcjk}
\usepackage{indentfirst,natbib,lingmacros}

\setlength{\bibhang}{6em}
\bibpunct[:]{(}{)}{,}{a}{ }{,}

\DeclareFontFamily{C70}{song}{}
\DeclareFontShape{C70}{song}{m}{n}{<-> CJK * nBatang}{}
\DeclareFontShape{C70}{song}{bx}{n}{<-> CJK * nGulim}{}

\newdimen\foot@parindent
\newdimen\footnumbersep

\def\fn@markstyle{\@thefnmark)}
\settowidth{\footnumbersep}{~}

\long\def\@makefntext#1{
	\settowidth{\foot@parindent}{\fn@markstyle}
	\@setpar{\@@par\@tempdima \hsize
	\advance\@tempdima-\foot@parindent
	\parshape\@ne\foot@parindent \@tempdima}\par
	\parindent8\p@\noindent
	\hb@xt@\z@{\hss\hss\fn@markstyle\hskip\footnumbersep}#1}

\begin{document}
\begin{CJK}{UTF8}{}
\CJKhangulchar

% 本文スタート

% 参考文献リスト
\begin{thebibliography}
  \bibitem[...]{...}
      ....
  \bibitem...
\end{thebibliography}

\end{CJK}
\end{document}

だいたいこんな感じになると思いますが,何か不具合や改善すべき点などがあれば,ぜひお知らせください.