====== TeXで満洲語 ======
朝鮮語とはちょっと外れますが,TeXで満洲語をタイプセットしてみましょう.ただ満洲語だけではつまらないので,日本語,朝鮮語,中期朝鮮語と混在した文書も作ってみます.
既にTeX/LaTeXの基本システム,さらにCJKパッケージがインストールされているものとします.詳細については[[memo:tex_install|TeXシステムの導入]],[[https://porocise.sakura.ne.jp/memo/korean_tex.html|TeXで朝鮮語を使う+PDFの作成]]と,関連したリンクを参照してください.また,中期朝鮮語の文書作成には,Micorosoft社の配布するNew Batang(あるいはNew Gulim)フォントが必要です.これらのフォントの入手などについては[[memo:font|フォントについて]]をご覧ください.
なお,TeX/LaTeXについての総合的な情報は,[[http://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texwiki/|TeX Wiki]]をご覧ください.また,誤った記述を発見された場合,ご教示いただければ幸いです.
===== MonTeXの入手とインストール =====
LaTeXで満洲語をタイプセットするためには,ManjuTeXというマクロパッケージがあったんですが,[[http://www.ctan.org/|CTAN]]の''language/manju/''ディレクトリを見てみると,その機能が[[http://www.userpage.fu-berlin.de/~corff/im/MLS/montex.html|MonTeX]]により完全にカバーされたので,そちらを使えとあります.実際,''manju/''ディレクトリ中のmanjutexも''language/mongolian/montex/''へのリンクとなっています.というわけなので,MonTeXを利用することにしましょう.
> どうしても以前のManjuTeXが使いたい!という人は,''obsolete/language/manju/manjutex''を利用してください.
とはいえ,MonTeXをダウンロードして展開し,INSTALLファイルにあるとおりに作業すれば終了です.
eLaTeXやdiagnoseパッケージが必要だ,と言われるかも知れません.eLaTeXはなくとも,とりあえず満洲語の組版自体はできます.最後に''mktexlsr''コマンドを実行するのを忘れないようにしましょう.
===== 満洲語組版のテスト =====
さて,インストールが正常に行なわれたとしましょう.いちおうテストを兼ねて,満洲語の文書を作ってみることにします.以下のようなファイルを用意します.
\documentclass{article}
\usepackage{mls} %% MonTeXパッケージ使用の宣言
\begin{document}
\mabosoo{manju} %% 「満洲」
\end{document}
このファイル(仮にファイル名を''manju.tex''とします)を,''latex''コマンドで処理します.
> latex manju.tex
特にエラーもなく,DVIファイルが出力されれば成功です.エラーが出る場合には,手順どおりにインストールしたか,あるいは足りないものがないか,確認してみましょう.
===== 満洲語と日本語の混在 =====
満洲語と日本語のみの混在であれば,pLaTeXを使うだけで大丈夫です.満洲語部分はアルファベットで入力するので,文字コードの問題もありません.
\documentclass{jarticle} %% pLaTeX用のドキュメントクラス
\usepackage{mls} %% MonTeXパッケージ使用の宣言
\begin{document}
満洲語で\mabosoo{manju}とは,「満洲」のことです.
満洲語で\bithe{manju}とは,「満洲」のことです.
\end{document}
このファイルを,''platex''コマンドで処理します.''latex''コマンドではないので注意!
{{:memo:manju_jpn.png?direct|}}
↑結果.縦も横も自由自在.コマンドの詳細については,MonTeX付属のドキュメントを見てください.
===== 満洲語と日本語と朝鮮語の混在 =====
さて本題.満洲語と日本語だけでなく,(中期)朝鮮語も混在させてみましょう.中期朝鮮語PDFの作成までの段階で,CJKパッケージを利用して中期朝鮮語の組版は可能になっていることを前提としています.
実は,この3つの混在はけっこう簡単です.MonTeXパッケージとCJKパッケージとを同時に使ってやればいいだけですから.ファイルをUTF-8エンコーディングで保存すること,''latex''コマンドで処理するのを忘れないように!
中期朝鮮語まで含めて組版するために,試しに清語老乞大の本文を入力してみましょう.
\documentclass{article}
\usepackage{mls} %% MonTeXパッケージ使用の宣言
\usepackage{CJK} %% CJKパッケージ使用の宣言
\begin{document}
\bithe{amba age si aibici jihe.}
\begin{CJK}{UTF8}{}
amba age si aibici jihe.
큰 형아 네 어로셔 온다 %% 中期朝鮮語テキスト
大兄よ,あなたはどこから来たのか?
\end{CJK}
\end{document}
{{:memo:m_j_mk.png?direct|}}
上は,このファイルを''latex''で処理し,''dvipdfmx''でPDFに変換したものです.
===== 結論 =====
ここまで,MonTeXを利用して満洲語をタイプセットする方法,さらにCJKパッケージと組み合わせて中期朝鮮語とも混在させて組版する方法について見てきました.けっきょく,パッケージを追加することで,いろいろな言語(の文字)を混在させることが可能になるわけです.清語老乞大といった朝鮮時代の満洲語学習書や,モンゴル語(私はよく知りませんが)なども可能でしょう.ぜひいろいろと試してみてください.
===== 参考文献 =====
* ランポート,L(阿瀬はる美訳)(1999)『文書処理システムLaTeX2e』,ピアソン・エデュケーション(Lamport, Leslie(1994) LaTeX: A Document Preparetion System, 2nd edition, Addison-Wesley Publishing Company, Inc.の日本語訳).
* Gossens, Mittelbach, Samarin(1994) The LaTeX Companion, Addison-Wesley Publishing Company, Inc.
* フリーソフトで作るPDF!: PDFを作るためのいろいろな方法が解説されています.