既にdvipdfmxが適切に設置されていることが前提となります.W32TeX(x86)から「標準インストール」に含まれているdvipdfm-w32.tar.gzをインストールしておきましょう.
dvipdfmxについては,プロジェクトのホームページなどを参考にしてください.TeX Wikiの「PDFの作り方」も参考になります.
まずは準備として,以下の手順が必要です.
まずはmapファイルを作成します.mapファイルは,dviファイルで用いられるフォントとそのエンコーディング,さらに実際にPDFで使用されるフォントとの対応を記述したもの(らしい)です.cid-x.map($TEXMF/fonts/map/dvipdfm/base以下にある)に直接記述を加えてもかまいませんが,別のファイルにしておいたほうが何かと便利です.朝鮮語関係の設定を書き込むということで,forhangul.mapというファイルに追加することにしましょう.なければ$TEXMF/fonts/map/dvipdfm/baseディレクトリにこのような名前のテキストファイルを作成してください.
forhangul.mapを作成したら,以下の内容を書き込みます.
wmj@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H HYSMyeongJo-Medium wmjb@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H HYSMyeongJo-Medium,Bold
ここでは明朝体の普通の書体と太字について,それぞれCID-Keyedフォントを設定しています.Adobe Readerで閲覧する場合,韓国語サポートがインストールされている必要があります.
また,一番右端の列,"HYSMyeongJo-Medium"の列を,たとえば
wmj@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H :0:!batang.ttc wmjb@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H :0:!batang.ttc,Bold
とすると,それぞれWindowsのフォントが適用されます.ただしフォントは埋め込まれません."!"を削除すれば,それぞれフォントが埋め込まれます.
さて,これらの設定を書き込んだファイルを読み込むように,$TEXMF/dvipdfm/config/dvipdfmx.cfgに記述を加える必要があります.ファイルの末尾に以下を加えてください.既に追加してある場合には不要です.
f forhangul.map
これで準備は完了です.必要な場合にはmktexlsrを実行してください.
dvipdfmxはコマンドラインから実行します.
> dvipdfmx <ファイル名.dvi>
ここではdvioutによるHLaTeX文書のプレビューにおいて作成した,hello.dviを用いた例を見てみましょう.コマンドラインから,変換したいdviファイルのあるディレクトリに移動します.その後以下を実行.
> dvipdfmx hello.dvi
hello.dvi -> hello.pdf
[1]
13222 bytes written
すると,同じディレクトリにhello.pdfが出来上がります.
もし「UniKS-UCS2-Hが見つからない」といった類のエラーが出る場合,実際にこのCMapが存在しないか,あるいは格納先のディレクトリが見つかっていない可能性があります.
CMapファイルのひとつであるUniKS-UCS2-Hは,Adobe Readerの韓国語サポートをインストールすると,Readerのディレクトリ内にあるResource以下,CMapというディレクトリに格納されます.TeXでは,設定ファイルである$TEXMF/web2c/texmf.cnfに記述されています.CMAPFONTSから始まる行を検索して見ると,
CMAPFONTS = .;$TEXMF/fonts/cmap//;c:/usr/Resource/CMap//
のように定義されています(場合によっては異なることもあります).ということは,定義されているパスの中に必要なCMapが見つかればいいわけです.Adobe ReaderのCMapを利用する場合には,上記のCMAPFONTSにパスを加えてやればいいでしょう.行の末尾に";"(セミコロン)を追加して,その後ろに自分のコンピュータにおけるCMap格納先を付け加えます.あるいは既に定義されているパスのディレクトリ(上記の例では"c:/usr/Resource/CMap")に,CMapファイルをコピーあるいは移動してやるのもひとつの方法です.
上記の例では明朝体に関してのみmapファイルに記述しました.以下ゴシック体とタイプについてまとめておきます.
wgt@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H HYGoThic-Medium wgtb@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H HYGoThic-Medium,Bold wtt@UKS-HLaTeX@ UniKS-UCS2-H :1:!gulim.ttc
1行目,"wgt"で始まる行がゴシック体(普通),2行目("wgtb"で始まる)がゴシック体のボールド,3行目("wtt"で始まる)がタイプライタ体(普通の太さ)です.
ゴシックについてはそれぞれCID-Keyedフォントを設定してありますが,タイプライタ体についてはGulimCheを指定してあります.好みに応じて変更してください.
mapファイルの記述方法については,上述のcid-x.mapファイルに詳細が説明されています.
以上,dvipdfmxでHLaTeX文書をPDFに変換するための方法を見てみました.フォントを埋め込まないため,サイズの小さいPDFを作成することができます.mapファイルに記述する時に,CID-Keyed フォントを用いずにTrueTypeフォントを指定し,かつフォント名の前の"!"を取り除くことで,それぞれのフォントを埋め込んだPDFを作成することもできます.
なお,dvipdfm-w32.tar.gzに含まれているdvipdfmを用いてもPDFに変換することができます.その場合にはType1フォントが用いられるので,PDFのサイズは大きくなります.
ここで紹介した方法は,朝鮮語のみで作成したHLaTeX文書をPDF変換することしかできません.そもそも日本語と朝鮮語が混在している文書はHLaTeXでは作成できないため,その他のパッケージを用いる必要があります.多言語が混在した文書,またそのPDF変換については別の文書をご覧ください.