既にTeX/LaTeXの基本システムがインストールされているものとします.また,中期朝鮮語の文書作成には,Micorosoft社の配布するNew Batang(あるいはNew Gulim)フォントが必要です.これらのフォントの入手など,詳細については閲覧に必要なフォントについてをご覧ください.
なお,TeX/LaTeXについての総合的な情報は,日本語TeX情報をご覧ください.また,誤った記述を発見された場合,ご教示いただければ幸いです.
さて,LaTeXが正常にインストールされました(としましょう).しかし,このままでは日本語の文書しか作成できません.朝鮮語のTeX文書を作成するためには,さらにパッケージを追加する必要があります.朝鮮語TeX文書作成のためのパッケージとして,(1)福井玲先生の作成したKorean TeX(kTeX)パッケージを利用する,(2)HLaTeXパッケージを利用する,(3)CJKパッケージを利用するといった方法があります.以下,それぞれの方法について簡単にまとめてみます.
このうち用途に合わせてパッケージを選択すればよいのですが,ここではHPackとCJKパッケージをインストールしてみます.
HPackのインストールといっても,HPackの配布元からダウンロードして,setupを実行するだけです.パッケージにはBasic(43.6MB)とFull(126MB)の2種類がありますが,とりあえずBasicパッケージをインストールすれば大丈夫です.
二つのパッケージの違いは,インストールされるフォントの分量です.
私がインストールしたときには,レジストリからファイルなどの情報を読み取れなかったらしく,エラーメッセージが出ましたが,それでも正常に動作しました.
インストールが終了したら,sample1.texを処理してみましょう.日本語文書のように,platexコマンドで処理するのではなく,latexコマンドで処理するのを忘れないように.
さて,朝鮮語のTeX文書を処理してみましょう.HPackを用いる場合,日本語と朝鮮語との混在文書は作成できません.ここではとりあえず,朝鮮語のみの文書を作成してみます.次のようなファイルを作り,エンコーディングをEUC-KRとして保存します.ファイル名は,仮にkorean.texとしましょう.
\documentclass{article} %% 日本語の文書とは異なり, %% 文書クラスがarticleである点に注意! \usepackage{hangul} \begin{document} %% 朝鮮語で「こんにちは」 안녕하세요? \LaTeX \end{document}
このファイルをLaTeXで処理します.日本語の文書ではないので,platexコマンドを使わない点に注意してください.
> latex korean.tex This is TeX, Version 3.14159 (Web2C 7.3.7) (./korean.tex LaTeX2e <2001/06/01> Babel <v3.7h> and hyphenation patterns for american, french, german, n german, nohyphenation, loaded. (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/base/article.cls Document Class: article 2001/04/21 v1.4e Standard LaTeX document class (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/base/size10.clo)) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/hlatex/hangul.sty 한글 문서 꾸러미 `hangul.sty' <2000/01/18>. (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/hlatex/hfont.tex (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/config/hfont.cfg))) (./korean.aux) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/hlatex/hswmj.fd) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/hlatex/hwwmj.fd) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/hlatex/hhwmj.fd) [1] (./korean.aux) ) Output written on korean.dvi (1 page, 476 bytes). Transcript written on korean.log.
できあがったkorean.dviファイルを,先と同じくdvipdfmにより処理します.
> dvipdfm korean.dvi korean.dvi -> korean.pdf [1] 40115 bytes written
できあがったkorean.pdfをプレビューしてみましょう.朝鮮語のフォントを埋め込んであるため,ファイルのサイズは若干大きくなっています.右の図は例題を拡大したもの.
詳細については付属のドキュメントをご覧ください.\usepackage{}でhangulではなく,hfontを使用した場合,ハングルのフォントだけが用いられ,章や参考文献などの題目に朝鮮語が用いられません.例えば,次のようなTeXソースを処理した場合を見てみます.
\documentclass{article} \usepackage{hangul} \begin{document} \section{첫번째} 안녕하세요? \end{document}
上の例では\usepackage{hangul}を使っていますが,これを処理したものと,\usepackage{hfont}に変えて処理したものとを比較すれば次のとおりです.
CJKパッケージをインストールする前に,ttf2pkというコマンドをインストールする必要があります.これはTrueTypeフォントをPKという形式に変換するもので,CJKパッケージを利用する際に必要です.
先にLaTeXの基本システムをインストールする際に,「標準インストール」までのファイルをインストールしたと思われます.ttf2pkは「フルインストール」に入っていますので,それだけダウンロードしてください.ダウンロードしたら,先にLaTeXをインストールしたときと同じディレクトリに展開します.例えば,C:\usr\localにインストールした場合は,同じディレクトリに展開すればOKです.
なお,ttf2pkの使用方法などについては,ttf2pkと補助漢字が参考になります.上述のページでUnicodeの文字をmsminchoを使って表示する方法が示されていますが,私のページでも,同様な方法を用いて,中期朝鮮語のTeX文書を作成します.
配布元のFTPサイトから,最新版(2003年8月15日現在バージョン4.5.2)をダウンロードします.ソースファイル(cjk-4.5.2.tar.gz)と,ドキュメント(cjk-4.5.2-doc.tar.gz)を適当なディレクトリに展開します.後はdocディレクトリの中にあるINSTALLファイルを見ながらインストールすればいいはずです.基本的にはtexinputディレクトリをLaTeXをインストールした$TEXMF\texディレクトリ以下にコピーします.後はドキュメントを適当なフォルダに格納します.
こちらもサンプルファイルで実験してみましょう.フォントの設定とかいろいろ面倒ですが,プレビューできずとも,LaTeXで処理したときにエラーがでなければとりあえずOKです.
CJKパッケージのインストールが終了したら,テストをしてみましょう.その前に,PDF作成の際にTrueTypeフォントが利用できるよう,準備をしておく必要があります.まずはBitstream Cyberbitフォントをインストールしておきましょう(詳細については閲覧に必要なフォントについてを参照).次に,$TEXMF\ttf2pk\baseディレクトリ[2004/06/26 修正] $TEXMF\fonts\map\ttf2pk(TeXディレクトリ構成が変わっています.不明な場合はttfonts.mapの所在を検索してください.[Thanks: 宮崎さん])にあるttfonts.mapファイルに以下の1行を追加しておきます.
cyberb@Unicode@ cyberbit.ttf
次に,ttf2tfmを用いてCyberbitフォントのtfmファイル(フォントメトリックファイル)を作成します.コマンドラインから以下のようにタイプします.
> ttf2tfm cyberbit.ttf cyberb@Unicode@
[2006/01/03 修正] 上記のコマンドで,"cyberbit.ttf"の部分が,"cyberb.ttf"となっていました.誤りです.というか,現実に存在するフォントのファイル名をご使用ください.ご迷惑をおかけしました.
かなり時間がかかりますが,処理が終了すると,カレントディレクトリにcyberb??.tfmといった大量のファイルが作成されているはずです(??は00からffまでの16 進数).これらの.tfmファイルは,$TEXMF/fonts/tfm/ttf2pkといったフォルダに移動します.
次に,TeXソースファイルを準備します.とりあえず,次のようなファイルを作り,UTF-8エンコーディングで保存しましょう.ファイル名はcjk.texとします.
\documentclass{article} \usepackage{CJK} \begin{document} \begin{CJK}{UTF8}{} こんにちは. 안녕하세요? 你好吗? \end{CJK} \end{document}
これをLaTeXで処理したあと,今度はdvipdfmxで処理します(dvipdfmでない点に注意).
> latex cjk.tex This is TeX, Version 3.14159 (Web2C 7.3.7) (./cjk.tex LaTeX2e <2001/06/01> Babel <v3.7h> and hyphenation patterns for american, french, german, ngerman, nohyphenation, loaded. (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/base/article.cls Document Class: article 2001/04/21 v1.4e Standard LaTeX document class (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/latex/base/size10.clo)) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/CJK.sty (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/mule/MULEenc.sty) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/CJK.enc)) (./cjk.aux) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/UTF8/UTF8.bdg) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/UTF8/UTF8.enc) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/UTF8/UTF8.chr) (f:/cygwin/usr/local/share/texmf/tex/CJK/UTF8/c70song.fd) [1] (./cjk.aux) ) Output written on cjk.dvi (1 page, 740 bytes). Transcript written on cjk.log. > dvipdfmx cjk.dvi cjk.dvi -> cjk.pdf [1] 18581 bytes written
右の図のように,CyberbitフォントでタイプセットされたPDFができたはずです.これで,とりあえずHPackとCJKパッケージという2つの方法で,朝鮮語を扱うことができるようになりました.
さて,ここまでの手順が完了したら,次はさっそく中期朝鮮語PDF文書の作成にとりかかりましょう.