釈読口訣の概説です.이승재(1998)をまとめ,例文などを補充したものです.例文の略号はそれぞれ以下の通り.
- 구인... ≪旧訳仁王経≫ 上巻
- 유가... ≪瑜伽師地論≫ 巻20
- 화엄... ≪大方広仏華厳経≫ 巻14
- 화소... ≪大方広仏華厳経疏≫ 巻35
- 금광... ≪金光明経≫ 巻3
例えば「(구인02:01-03)」の場合,≪旧訳仁王経≫の2張1行目から3行目ということになります.各資料の詳細については
口訣資料についてを参照してください.
格語尾
[主格] -/이, -/이
*
‘-’... 華嚴經疏(12世紀初)の例が最初.
- 聲聞辟支佛 般湟槃 (화소07:16-17)
- 大衆 僉然 而 坐 (구인02:09)
*高麗後期の송독?口訣では
‘-’が用いられるようになる.
[對格] -/(을)
*
‘-’... 華嚴經疏が最初.動名詞語尾
‘-’に直接統合した例.
[處格] -/아, -/여
*11世紀以降の資料にしか現われない.
- 九劫蓮花座 坐 (구인02:07-09)
*釋讀口訣資料では,‘時’と統合する場合にのみ
‘-’ が用いられる.
[屬格] -/ㅅ, -/(의)
*吏讀の‘-叱’(無情物と尊稱),‘-矣’(非尊稱)とに對應する.
- 衆生 根 得 (구인03:13-15)
- 佛 國土 至 (구인02:12-14)
- 復 五道 一切衆生 有 (구인02:01-03)
[具格] -/로
- 菩薩 是 事 有 (화소01:04-05)
[共同格] -/과, -/여
*母音あるいはㄹの後での‘-와’への交替はなかった.
- 謂 所 色 受 想 行 識 (화소02:09)
- 又 此 得三摩地 相違法 及 得三摩地 隨順法 廣聖敎 義 (유가15:04-09)
- 我 及 衆生 有 (화소07:11-14)
- 謂 所 分減施 竭盡施 內施 外施 內外施 一切施 過去施 未來施 現在施 究竟施 (화소09:06-08)
[呼格] -/하, -/여, -/아
*
‘-’(尊待), ‘-’(平待), ‘-’(下待)の使い分け.
- 大王 (화소10:17), 世尊 (구인03:22)
- 佛子 (화엄02:10), 仁者 (화엄09:02)
- 佛子 (화소01:03), 善男子 (구인11:20)
*
‘-’... 感嘆の機能も同時に持っていた.
副語尾
[提題] -/(은)
*體言と動名詞語尾につく.
*吏讀の
‘-段/’系統に對應する語尾はない.
- 佛 大衆 告 (구인03:17-18)
- 百億萬土 六大動 (구인11:12-13)
- 其 花 上 非想非非想天 至 (구인02:12-14)
[復同(添加)] -/도
- 光 亦 復 爾 (구인02:12-14)
*
‘-/마도?’の使用もあり... 硏究の必要.
- 少 法 得 (화소18:08-15)
*吏讀の‘-置/도’に該當する語尾はない.
[强調(限定)] -/사
*15世紀の
‘-’に該當する.
*名詞․助詞․動詞語幹に直接統合する.
*あるいは副詞․副詞語にも直に統合... 吏讀よりも分布に幅が見られる.
- 金剛原 登 (구인11:07)
- 於 已 淸淨 難 成辯 (유가21:23-22:04)
[(各自)] -/마다
*體言類と體言語尾に統合.
- 徧 (화엄13:02-03)
- 念念 (화엄14:19)
[(選擇)] -/나
*吏讀の用法とほぼ同じ.
- 設[비록] 得[시러곰] 出家 (유가08:08-12)
用言語尾(1) 先語末語尾
[敬語法(1) 尊敬法] --/시, --/시, --/겨
- 佛 此 以 衆生 度 (화엄18:08-11)
- 如來 滅 後 有 (화소07:03-05)
*화엄, 화소では
‘--’により尊敬法の
‘-시-’を表していた.
*‘賜’の音價が
시>と變化するにつれ,금광, 구인, 유가などでは
‘--’により
‘-시-’を表記するようになった.
- 爾 時 佛 大衆 告 (구인03:17-18)
*
‘--/’により尊敬法を表記した例も見られる.
- 復 [於] 頂上 千寶蓮花 出 (구인02:12-14)
*
‘--’... 尊敬法先語末語尾の一種.
*口訣の尊敬法...
‘-/-’(尊待),
‘--’(平待),
‘-Ø-’(下待)の3等級體系.
*이승재(1996:531)によれば,尊敬法における主語と先語末語尾との対応は以下の通り.
| 主語 | 先語末語尾 | 叙述語(‘有’の場合) |
極尊待(尊待) | 仏類,地位の高い菩薩など | ‘-/-’ | 有(격시>겨시)- |
尊待(平待) | 大衆,仏子,無情名詞など | ‘--’ | 有(잇겨)-, 有(잇겨)- |
下待(下待) | 衆生,無情名詞など | ‘-Ø-’ | 有(잇)-, 有(잇)- |
*吏讀の尊敬法體系とほぼ一致する.
*13世紀末以降の順讀口訣資料では
‘--’が見られない.
[敬語法(2) 謙讓法] --/
*화소では話法動詞にのみ統合する.
- 時 十六大國王 中 舍衛國主 波斯匿王 名 曰 (구인02:24-03:03)
- 一切 諸 如來 供養 (화엄15:03-07)
[時相法(1) 現在] --/
*吏讀の
‘-臥-/’に對應.
*
‘--’... 尊敬法の
‘-/-’と
‘--’よりも後ろ,意圖法の
‘-//[오/우]-’の前に統合.
- 今日 如來 大光明 放 (구인02:-23)
*
‘--’のすぐ後ろに動名詞語尾
‘-/ㄴ’がついた例も多い.
- 摩訶衍 化 行 (구인02:24-03:03)
*15世紀の
‘--’につながるか?
[時相法(2) 過去] --/다(더)
*12世紀の資料である화소, 화엄では現われない.
*13世紀半ばと見られる구인になって初めて現われる.
- 四住 開士 [爲] (구인11:21-22)
- 我 八住 菩薩 [爲] (구인11:22)
*高麗後期の順讀口訣資料には
‘--’と
‘--/더’が多く見られる.
[敍法(1) 確認法] --/거, --/고, --/아, --/나
*
‘--’... 動名詞語尾
‘-/ㄴ’,
‘-/ ’の前に,尊敬法の
‘-()-’と
‘--’の前に,終結語尾
‘-/다’の前に統合される.
*15世紀の場合,先語末語尾‘-거-’と‘-리-’が統合すると‘-리어-’として實現するが,釋讀口訣では
‘--’となる.
- 一 利益 無 (화소11:03)
*
‘--’...
‘--’と似た分布.
*以下の例で
‘--’と
‘--’とは形態論的構成が同じ.
*
‘--’と
‘--’... 同一な形態素の異表記といえる.
- 至 (화소12:11) cf. 令 (금광15:14)
*
‘--’... 以下の例で
‘-()-/고(골)’の前に來ているため,
‘--’や
‘--’と同一の形態素と見なしうる.
*
‘--’の後ろには動名詞語尾や尊敬法の
‘-()-’などが統合可能.
*ただし動名詞語尾が統合する際には,間に
‘-/-/오’が入り込む.
*
‘--’...
‘--’や
‘--’と分布が同一.
- 信奉 (화엄10:10) cf. 거든(15世紀), 걸든(吏讀)
- 見 (화엄03:02) cf. 야쎠(15世紀)
- 說 (구인02:07)
[敍法(2) 意圖法] --/오, --/오, --/오
- 當願衆生 大悲 熏 所 (화엄07:16)
- 九劫蓮花座 坐 (구인02:08)
- 當願衆生 廣 一切 度 (화엄05:19)
*
‘-//-’の前に來る先語末語尾... 謙讓法,確認法,尊敬法,時相法,强調法など.
*
‘-//-’の後ろに來る先語末語尾は
‘--/’のみ.大部分は動名詞語尾が統合する場合が多い.あるいは連結語尾
‘-/며’と終結語尾
‘-/다’程度.
*動名詞語尾の前に來る
‘-//-’は,1人稱主語に呼應する形態素ではない.
*ただし連結語尾
‘-’,終結語尾
‘-’と統合した場合,その動詞に呼應する述語は1人稱.
- [是] 故 我 今 略 佛 歡 (구인11:13)
[敍法(3) 强調法(感歎法)] --/곳, --/앗, --/옷, --/ㅅ
*全て‘-ㅅ-’を持っているという點が共通する.
cf. 15世紀の感動法(志部昭平1990:182)... Ⅳ*ㅅ다(不定), Ⅰ놋다(現在), Ⅰ닷다(回想), Ⅰ*괏다(强勢)
*さらに
‘--/골’を追加しうる.
*これらの周りに‘必當, 宜, 皆, 悉’などの副詞が呼應する... 蓋然,强調.
*
‘--’と
‘--’は分布が同じ.
*
‘--’は例が多くないが,意圖法の
‘--’の前に來る.
[敍法(4) 可能法] --/
*常に語末語尾のすぐ前に來る.
*‘可’や‘能’に呼應する例が多い
.
cf. ‘應, 當’に呼應する例もあるが,むしろ少ない方.
- 淨土 居 (구인11:07)
- 信 能 一切佛 示現 (화엄10:07)
[先語末語尾の配列順序]
*例:
‘[호리앗다]’<
‘+오+ㅭ+ㅣ+앗+다’と分析できる.
→‘語幹+意圖法+語末語尾(ここでは動名詞語尾)’の構成と‘繫辭+强調法+語末語尾’の構成が複合したもの.
*‘語幹-過去-謙讓-確認-尊敬-强調-現在-意圖-可能-語末語尾’の順.
*確認法の
‘--’と
‘--’... 常に尊敬法の先語末語尾よりも前.
→
‘[낙시다]’の
‘--’も確認法の先語末語尾といえる.
‘[]’, ‘[나리며]’の
‘--’も同樣.
*逆に,尊敬法の先語末語尾よりも後ろに來る
‘-/-’は確認法の先語末語尾ではないといえる.
→
‘善[이시곤뎌]’, ‘[걱시곤여]’などの
‘--’や,
‘[시골며]’, ‘[시고다]’などの
‘--’は强調法の先語末語尾ということに.
*確認法の
‘--’と
‘--’... すぐ後ろに時相法(現在)の先語末語尾が統合することがない.
→
‘[고오다]’などの
‘--’も强調法の先語末語尾といえる.
*けっきょく,確認法か强調法か明らかでない
‘--’のすぐ後ろに統合する
‘--’は,時相法(現在)の先語末語尾
‘--’を表記したものであるといえる(
‘[고며]’, ‘[고다]’など).
用言語尾(2) 語末語尾
[終結語尾(1) 平敍形] -/다
*‘如’から?
*繫辭‘이-’の後ろで
‘-/라’(<羅)に交替することがある.
*
‘--/리’の後ろでも
‘-’が
‘-’に交替.
→
‘--’が動名詞語尾
‘-ㅭ’と繫辭‘이-’の統合したものであることを意味する.
- 捨 (화소10:11), 獲 (화엄02:13)
*ただし
‘[이다]’, ‘[호리다]’のごとく,‘-다’>‘-라’の交替を見せない例も多い.
→交替が隨意的であったというべき.
*意圖法の先語末語尾
‘-//-/오’や時相法の先語末語尾
‘--/더’の後ろで‘-다’が‘-라’に交替することはない.
→後代の順讀口訣になってはじめて起こるものと見られる.
[終結語尾(2) 疑問形] -/고
*疑問詞が先行して,說明疑問に用いられる.
- [호리고], -[이앗고], [고], [고오리고]
*
‘’... 15世紀の
‘호리오’のごとく,ㄱの弱化/脫落現象が見られない.
*
‘-’... 繫辭+强調法の先語末語尾+疑問形の終結語尾.
*
‘’... 動名詞語尾のすぐ後ろに
‘-’が統合.
*舊譯仁王經の
‘[고오리오]’(구인03:23)... ‘-고’が‘-오’に交替.
*舊譯仁王經の
‘[고오리아]’(구인14:18)... 判定疑問の
‘-/아’が用いられる.
→釋讀口訣で判定疑問の‘-가’が用いられたことはないが,以下の例から設定可能.
- 有 不 (구인14:18)
*上の例に見える
‘--’の後ろでの‘-가’>‘-아’交替は,以下の例でも確認できる.
- 一 二 之 義 其事 云何 (구인14:19-20)
[終結語尾(3) 感歎形] -/여, -/여
*起源的には繫辭に感嘆形語尾
‘-어’が加わった構成.
→
‘-/’が名詞や動名詞語尾に統合されるのが一般的であるため.
*以下のように,終結の機能をになう例も.
- 禮(구인11:08), 成就 (금광03:22, 04:11), 說 (금광13:04)
*
‘-/’が結合したものとして,
‘-/뎌’, ‘-/뎌’がある.
→形式名詞
‘’に
‘-/’が統合したもの.
- 善哉 (화엄09:02), 功德 (화엄09:06)
- 獲得 (유가05:18)
[終結語尾(4) 命令形] -/셔
*<화소>, <화엄>に
‘-[곡시셔]’, ‘-[나쎠]’が見える.
→それぞれ15世紀の‘-쇼셔’, ‘-아쎠’に對應.
- 王 白 言 大王 當 知 (화소10:17-18)
- 當願衆生 [於]聖地 入 永 穢欲 除 (화엄02:24)
*
‘-’の前に來る
‘--’, ‘-()-’, ‘--’は全て先語末語尾といえる.
→15世紀の‘-쇼셔’, ‘-아쎠’の‘-쇼-’と‘-아-’も先語末語尾に由來するか?
*15世紀の
‘라’체に該當する命令形語尾は見受けられない.
*その代わり,
‘當 知 二十種 有’(유가04:06-10)の
‘知[알오다]’に注目.
→この
‘-/다’を後代の資料では
‘라’체の命令形語尾に翻譯するのが一般的... 命令形の終結語尾と見ること可能か?
*命令形の終結語尾の前に,確認法の先語末語尾が統合する... 釋讀口訣に見られる大きな特徵.
[連結語尾(1) 對等的連結語尾]
*
‘-/며’, ‘-/고’など.
*
‘-’... 吏讀の‘-彌, -彌, -旀’に對應.
*
‘-’... ‘古’字に由來.吏讀では‘-遣’であり,口訣と對應しない.
[連結語尾(2) 從屬的連結語尾]
*‘-아/어’... 口訣では
‘-/아’(<‘良’)で表記するが,吏讀,鄕歌とも一致する.
*
‘-/ㄱ/기’が統合した
‘-’もある.
*尊敬法の先語末語尾
‘-/-’の後ろでは,
‘-’が統合せずに
‘-/하’が統合する.
- [是] 故 佛佛 [於]世 出現 衆生 爲 (구인14:04-07)
*繫辭‘이-’に連結語尾
‘-’が統合する場合,
‘-[이라]’として實現.
*原因․理由をあらわす連結語尾...
‘-//아곰’.
*
‘-/오’が原因や理由をあらわす場合も.
- 異 非 故 名 續諦 (구인14:07-08)
*方法を意味する連結語尾...
‘-/오’で表記.
- 其 有 所 隨 (화소10:12)
- 此 正行 因 (유가06:07)
*
‘-’が統合した動詞が,格助詞を支配している點に注意.
*方法を意味する連結語尾...
‘-/이’も存在.
[動名詞語尾]
*動名詞語尾は,獨自に連結語尾として使われることがある.
cf. 鄕歌の‘見昆(處容歌), 無叱昆(隨喜功德歌)’における‘-昆’... <‘-고+ㄴ’と分析可能.
→口訣における
‘-/곤’... この場合,
‘-/ㄴ’が連結語尾の機能を果たしている.
*動名詞語尾に助詞類が統合したり,さらに形式名詞
‘’が加わった構成で,文法的機能を果たす場合が多い.
- -[ㄴ], -[ㄴ], -[ㄴ로], -[ㄴ], -[ㄴ다]
- -[ㅭ], -[ㅭ], -[ㅭ로], -[ㅭ], -[ㅭ뎌]
参考文献
口訣についての参考文献を参照のこと.